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最近、災害が切迫している状況を伝えるニュースを見ていると、「◯◯市が『緊急安全確保』(災害レベル5相当)を発令」という報道に接する場面が増えましたが、こうした報道に接する度に、「あのとき、政府の方針に抗い、抵抗をしておいて、本当に良かった」と思います。

「あのとき」私は三条市長であり、政府の中央防災会議防災対策実行会議委員でした。

「あのとき」私は、三条市の総合防災アドバイザーであり、防災対策実行会議の分科会委員でもあった東京大学の片田特任教授から一本の電話をいただきました。

「国定市長、今、政府はとんでもない暴挙に出ようとしています」と…

伺うと、当時の市町村長が持っていた「避難勧告」「避難指示」という2段階の法的発令権限を見直し、「避難指示」に一本化するというのです…

これは、被災経験首長としては、断じて容認することができるものではありませんでした。

災害対応の現場指揮官である市町村長には、災害の逼迫度を地域住民に伝えるカードが不可欠です。

しかも、災害の逼迫度合いを段階的に伝える複数のカードが、そして法的裏付けを持つカードが不可欠なのです。

それを「避難勧告と避難指示は違いが分かりづらいから…」という理由だけで、安直に一本化するだなんて…

違いを市民に伝えきれないのは、違いを日頃から地域住民に伝える弛まぬ努力を市町村長が怠っているからであって、本当に必要となる万が一の事態が発生した際に、わざわざ地域住民に災害逼迫度を伝えるカードを削り、地域住民の生命のリスクを徒に高めるなど、言語道断、本末転倒の暴挙なのです。

幸い、私の防災対策実行会議委員という立場は、その暴挙に異論を唱え、事実上封じ込めることができました。

更に幸いだったのが、当時の担当官房審議官が、私の官僚時代の直属の上司であり、直接かつ率直に話ができる相手であったことです。

私は意を決して反対の狼煙を上げ、紆余曲折の結果、「避難指示」「緊急安全確保」の法的裏付けを持つ避難情報という市町村長が持つ2枚のカードを守り切ることができたのですが、こうした様々な幸運が重なったとはいえ、2枚のカードを守り切ることができたのは、私のささやかな誇りです。

災害の激甚化に歯止めが掛からない昨今、官民双方の避難情報に対する理解を平時により深めていくことを通じて、万が一の際に犠牲者を出すことなく危機を乗り越えてほしいと強く望みますし、私も衆議院議員という今の立場で、その理解促進に取り組んでまいります。